約 85,632 件
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/292.html
信条発声カクゲンオー!・SS 単発 第1話 DBへ SS保管庫へ戻る
https://w.atwiki.jp/damecool/pages/5.html
投稿されたSSのまとめです。 女「人生オワタ。」 男「いきなりどうしたんだよ、何があった。」 女「遅刻欠席が多すぎて進級できないそうだ。」 女「困ったな…どうしようか…」 男「うーん、ていうかなんでちゃんと学校来ないのさ?」 女「実は…」 男「うん…ゴクリ」 女「オンラインゲームにはまってしまってな。 メインキャラなんか2回も転生してしまったよ。ふはは」 よかったら男もやらないか?今キャンペーン中でな、 他では絶対に手に入らないレアアイテムが…」 男「……(だめだこいつ…はやくなんとか(ry )」 女「ふう…。ところで男。」 男「?」 女「タミフルという薬を服用すると幸せになれると聞いたんだ。 試すなら今しかないと思わないか?」 男「らめえええぇえぇえぇえぇぇえ」 女「人生オワタ。」 男「またかよ。こんどは何があった。」 女「Winnyやってたらウィルス踏んでしまって、マイピクチャが流出しまくった。」 男「えっ!なかにはどんな写真が!?」 女「男のプライベートを隠し撮りしまくった写真数百枚だ。すまない。」 男「らめぇぇぇぇぇえええええええええ」 男「将来の夢は?」 女「ニートかお嫁さんか、とにかく働かなくていい状況になる事だな」 こうですかわかりません>< 女「人生ハジマタ。」 男「おっとぉ。どうした、何があった」 女「実は2週間ほど前から毎日のように来客があってな。これがなかなかいい人なんだ。 救われた気分だよ。」 男「へえ、友達?」 女「いや、知らない人だった。たしかエホバの商人と名乗っていたな。」 男「ちょ…」 女「商人というから何か押し売りされるのかと最初は疑っていたのだがな、 話を聞いていると、何かこう、救いの光のようなものが見えた気がしてな 熱心に私の話を聞いてくれた。留年しても神は許してくれるそうだ。 よかったら男も神を信じてみないか?救われるぞ」 男「……(やっぱりだめだこいつ…はやくなんとか(ry )」 女「\(^o^)/」 男「こ、今度はどうした?」 女「携帯をなくした」 男「・・・ちゃんと止めたんだよな?」 女「もちろんだ。a○のお姉さんは優しかったぞ」 男「女にしてはやるじゃないか!」 女「ただし、だ」 男「?」 女「携帯の中にはこの前、男が眠っている間に撮った写真が6メガほど保存してある。 この前Winnyで流失した秘蔵フォルダも真っ青な内容だ」 男「\(^o^)/」 テスト中… 女「……」 試験監督「のこり10分。」 女「……」 試験監督「のこり5分。出席番号と名前を確認してください。」 女「ザ・ワールド」 【催眠術】 女「催眠術を習ってきたぞ」 男「いきなりだなお前」 女「そこに座れ、かけてやる」 男「ちょ、ふざけんな」 女「…」 男「……わかったよ……」 女「いいか?この五円玉をみつめろ」 男「ん」 女「いいな?男はだんだん……眠くなる……」 男「…」 女「だんだん……猫になる……」 男「……猫?」 女「……猫……猫……」 男「…」 女「……にゃー」 男「お前……あーあ……」 女「にぃ?にゃーにゃー」 【増えるわかめ】 女「……」 男「なんだ?気分でも悪いのか?」 女「……お腹一杯なんだ……えっぷ」 男「?食いすぎはよくないぞ?何食った?」 女「わかめ」 男「はぁ?」 女「いやな、ダイエット中なんだ」 男「ああ、そうか」 女「でな……わかめは体にいいってことで、主食にしてるんだ……」 男「なんかいちいちずれてるよな」 女「……いっぱい食べたかったから……コレを食べてたんだ……」 男「……まさか……」 女「増えてる……のか?」 男「どこまでバカなんだお前?ほら、病院いくぞ!あーあ……丸々一袋……」 女「いたたたた……」 【納豆パティターイ】 女「ダイエット方法を変えた」 男「わかめは禁止な」 女「大丈夫。今度はテレビでも取り上げられていた。安心だ」 男「…」 男「……すごいよな……」 女「ん?」 ねりねり… 男「お前みたいなのが……騙されるんだな……」 女「何を言っている?」 ねりねりねり… 男「…」 女「納豆はな、痩せるんだ。言ってた」 ねりねりねりねり… 男「もうとめねーよ。好きにしろ」 女「でもな……納豆嫌いなんだ……」 男「俺にはお前がわからない」 ねりねりねりねりねりねり…… 【逆立ち】 女「男」 男「なんだよ」 女「逆立ちがしたい」 男「熱でもあるのか?」 女「壁相手じゃできんのだ」 男「だろうな。イメージすらできねぇよ」 女「だからな、足を押さえてくれ」 男「はいはい……」 女「行くぞ……とう!」 したっ! 女「おおっ!」 男「成功か?」 女「うんうん!これはすごい!世界が逆だ!」 男「それが見たかったのか」 女「そうだ!すごいぞー!いい景色だ!男も見てみろ!」 男「俺にはお前のパンツが丸見えだがな」 女「!!!!!!!!!!!」 男「顔に似合わず可愛いの履いてるな……うさぎさん?」 女「!!!ば、ばか!みるな!はなせ!ばかばか!!!///////」 男「そりゃお前だ」 女「\(^o^)/」 男「今度は何やらかした。」 女「さっき暇だったからVIPやってたんだ。」 男「お前……VIPPERだったのか……。」 女「それで偶然うpスレと出会ったわけだ。」 男「で?」 女「スレは徐々にヒートアップしていき、更新するたびにリンクが増えていく。」 男「……ほぉ。」 女「私もヒートアップしてそのリンクを光を超える速度でDLしていたわけだ。」 男「……悪い予感がするんだが。」 女「真相はあのノートの中にある。」 パカッ 男「うはっwwwwwグロ画像にブラクラwwwwwww」 女「ノートン先生も反応しまくりだぞ。またお前の画像流出したと思う。」 男「\(^o^)/」 【前転】 女「男」 男「なんだよ」 女「今度はでんぐり返しだ」 男「学習せんのかお前は」 女「今度は大丈夫。スパッツを履いた」 男「あーそうか。別に俺は履かなくてもいいけどな?」 女「/////うるさい///」 男「で、俺はどうすればいいんだ?」 女「あのな、上手いこと廻れんのだ。だから転がしてくれ」 男「お前ほんと熱あるんじゃねーか?」 女「いいぞ」 男「はいはい……」 ころん! 女「!!うわっ……もう一回だ!」 ころん! 女「あははっ!楽しいぞ!」 ころん!ころん! 女「……あはは……」 ころん!ころん!ころん! 女「ちょっ……」 ころんころんころんころん… 女「……やめて……吐く……」 男「あ、ごめん。俺が楽しくなってた」 女「……うえっぷ……」 【VIPクオリティ】 女「男、私のクオリティの凄さを見せてやる」 男「見せんでいい。おとなしくしてろ」 女「…」 【めがね】 女「男、男」 男「なんだよ」 女「私のめがねを知らないか?」 男「…」 女「授業中寝ていたらなくしてしまった。」 男「……」 女「あれがないと目が見えん。まずいな……」 男「始めてみたよ」 女「は?」 男「頭だ、頭」 女「え?あ……」 男「すごいな。そんなやついるんだな」 女「…」 男「?」 女「これは……私のじゃない」 男「おまっ」 女「…」 男「……誰のだよ……そもそもお前めがね着けてたか?」 女「あ、今日はコンタクトだった」 男「…」 女「……ドジッ子……」 男「ちがう」 女「……/////」 【弁当】 男「あ、やべ……弁当忘れたな」 女「ははは、そんなこともあろうかと」 男「え?」 女「今日はな、感がいいんだ。男は弁当忘れてくると思ってた」 男「感がいいって言うか?それ」 女「でな、二人分作ってきた」 男「おお、褒めてやるよ。ありがとう」 女「////」 男「それじゃ貰おうかな」 女「あ」 男「なんだ?」 女「…」 男「お前……まさか……」 女「お箸……忘れた」 男「ああ、なんだ。そっちか……いいよ。俺割り箸持ってるから」 女「あ、でもサンドイッチだった」 男「…」 女「ほら、あーん」 男「/////」 女「やあ、男。今日も魅力的……だ……」 男「女!? どうした、立ちくらみか!?」 女「ああ、すまない。 ようつべでガンダムSEEDを見ていたら、つい徹夜してしまったんだ」 男「……俺、なんでコイツと一緒に登校してんだろ」 【新聞】 女「この間な」 男「おう」 女「新聞屋さんが来たんだ」 男「ああ、新聞とってくださいってやつな」 女「だけどな、うちはほかの新聞とってるからいいですって言った」 男「あれ?やるじゃん」 女「しかしな、向こうもプロだ。すぐには諦めん」 男「ほうほう」 女「でもな……最後は私の毅然とした態度に負けたのか、諦めた」 男「おお、すごいな」 女「そしたらな、これをくれたんだ」 男「洗剤……とビール券?」 女「うむ。そのうえちょっと書類にサインするだけで、朝夕新聞を入れてくれるって」 男「いろんな意味ですごいなお前」 女「え?」 次
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/471.html
原子豪傑 アトムライザー・SS 単発 最終話付近 DBへ SS保管庫へ
https://w.atwiki.jp/jyugoya/pages/929.html
SS分類/水素の心臓 WR/2005/12/04 儀式魔術/絢爛舞踏祭開始 9日目・朝 水素の心臓ルート Iコース 瀧川救出作戦(前編) GPM、式神の城、世界の謎、水素の心臓合同ルート 12日目・翠色の髪の伝説 瀧川救出作戦(後編) WR/2005/12/18 儀式魔術/絢爛舞踏祭終了 BALLS ボーナス クリサリスの休日(前編) BALLS ボーナス クリサリスの休日(後編) 水素の心臓 軍神物語の中の絢爛舞踏祭 カウンターアタックのはじまり 戻る→SS分類
https://w.atwiki.jp/tokimeki_dictionary/pages/1036.html
Character's house ○○の家【○○のいえ】 ここでは各キャラクターの自宅について扱う。主人公の自宅については「自分の部屋」を参照のこと。 概要 どのシリーズでも全体的に一軒家に住むキャラが多い傾向にある。 その多くは主人公と同じく、在籍校がある市内に住んでいる(『3』のヒロイン8名は全員もえぎの市在住)ようである。 伊集院家をはじめ、金持ちも多く登場するので、豪邸が登場することもしばしば。 また、GSシリーズでは親元を離れて暮らしているキャラも多い。 『1』『外伝作品』 主人公宅の隣家に藤崎詩織が住んでいる。 イベント「2人一緒の誕生日」が発生すると、藤崎家に招待されて行く事ができる。 クリスマスパーティーで行く事になる伊集院家も、ある意味「女の子の実家」と言えるだろう。 『ときめきメモリアル Selection 藤崎詩織』では、「デートスペシャル」→「Winter」→「電話に出る。」を選択すると藤崎家に行くことになる。と言うか、電話に出ないとゲームが進まない。 『ときめきの放課後』では、早乙女好雄・早乙女優美のイベントで早乙女家に行く事になる。 『2』 女性キャラの誕生日が日曜日でデートの約束をしていない場合は、プレゼントを渡しにそのキャラの家を訪問する形になる。 デートの約束がある場合は、その帰りに一緒に家に行く事になるが、他のキャラとデートをしている場合は無視する形になるので注意。(無視されたキャラの傷心度が上がる) デートの帰りで本人の家に同行するのは分かるが、そうでなければ、よく住所まで調べたものである。坂城匠から電話番号やスリーサイズとか以外も含めて、秘密裏に教えてもらったのだろうか。 プレゼントを渡しに行ったキャラの評価が友好以上だと、家の中に入れてくれる事があるが全員ではなく、水無月琴子、一文字茜、伊集院メイ辺りはギリギリ友好程度だとまず中には入れてくれない。 また、佐倉楓子に関しては、家の中に入るのは不可能な模様。 陽ノ下光と白雪姉妹は、条件を満たせばイベントが発生する。 なお、『2』の主人公は8歳まで陽ノ下家の隣に住んでいたが、7年ぶりに戻ってきた後はひびきの市内の別の場所に住んでいる。 ちなみに、麻生華澄の実家は、陽ノ下家の向かって右にある。 『3』 趣味コマンドで「散策」を行うと、女の子の家を発見することがある。 特に、渡井かずみを登場させるには、彼女の家を発見する必要がある。 ちなみに、河合理佳・和泉穂多琉の家は街エリア、その他の6名の家は丘エリアにある。 『4』 主人公宅の隣家に大倉都子が住んでいるが、都子が主人公宅を訪れることは頻繁にあっても、何故かその逆は無い。 主人公が女の子の家を訪れるイベントとしては、前田一稀のバイク改造イベントで前田家作業場を訪れるものや、七河瑠依のクリスマスイベントで七河家を訪れるものなどがある。 『GSシリーズ』 好感度が一定以上だと、男性キャラから自宅に誘われることがある。 ただし、年上キャラ(『GS3』の先輩2人は除く)や隠れキャラ(白羽空也は弟と同居しているので除く)の家に行くことは無く、氷室零一・天之橋一鶴・真咲元春に関してはドライブデートがその代わりとなる。 なお、天之橋邸には毎年あるクリスマスパーティーで行くことになる。 また、『GS3』で藍沢秋吾のシナリオを進めると、藍沢の家に行くことになる。 『GS3』『GS4』では、露出が高めの服装をすると男子の反応が変化する。 『GS2』では、主人公宅の隣家に音成遊が住んでいる。 『GS3』では、主人公が宇賀神みよと共に花椿カレンの自宅にて3人でお泊まり会をするイベントがある。 ゲーム内では未使用に終わっているが、宇賀神の部屋の背景イラストも存在したことが一部書籍の中で確認できる。 『GS4』でも同様に、花椿みちる・ひかる姉妹の自宅でのお泊まりイベントが発生する。 関連項目 地名・デートスポット West Beach
https://w.atwiki.jp/thcojude88/pages/123.html
ゲゲゲのSSその2 呪われた館! 妖怪肉人形 呪われた館! 妖怪肉人形その2 呪われた館! 妖怪肉人形その3 鬼太ラブ 水の妖怪! 水虎! 水の妖怪! 水虎!その2 『夏目友人帳』が欲しい かまぼこ -Kamaboko- かまぼこ -Kamaboko- その2
https://w.atwiki.jp/dangerousss3/pages/128.html
第一回戦【洋館】SSその2 主人公のことについて、少し話しておこうと思う。 俺が知る限り、やつらは自己顕示欲が肥大しており、放置されることを嫌う。 自分がその物語の本筋の、中心にいなければ気がすまないのだ。 この性格は非常に厄介であり、例えばこんな状況になると手に負えない。 『どういうことだ』 ノートン卿の声は苛立っていた。俺だって、その気分だけは同じだ。 なにしろこの洋館中のあちこちから凄まじい轟音が、 館それそのものが自力で解体作業をおっぱじめたような騒音が響いている。 それに、さっきから通路を駆け回り、あるいは跳ね回って無差別な破壊を繰り広げている、 黒い異形の影の群れまで存在していた。 こうした騒音には、相乗効果の法則が適用されるに違いない。 低学歴の俺にだってそのくらいわかるんだ。 物置の一つに隠れた俺たちは、そうしたこの世の地獄のような 破壊・騒音・震動、その他に耐えなければならなかった。 おかげで頭痛が酷い。 『私はどういうことだと聞いているぞ、ユキオ』 「聞こえてますよ」 不本意ながら、ノートン卿の声について、無視はできても遮断はできない。 魔導書をいつでも開けるように抱えて、部屋の隅にうずくまる。 「うるさくてたまりませんよ、俺だって」 とはいえ、どうしようもない。 やつらがとっている戦術はだいたいわかる。 弓島は適当に館中の壁だか柱だかを撃ちまくって、その部分だけを強制移動させ、 俺たちを崩壊に巻き込むか、炙り出すかしようとしている。 直接遭遇してからの攻撃パターンに、自信があるのかもしれない。 一方で倉敷は、とりあえず手駒を増やすため、片っ端からあの異形を召喚しているようだった。 こちらも包囲される前に慌てて出てきた相手を打ち取るパターンに、何か策があるのだろう。 二人はうまく噛み合ってる。 俺はといえば、魔人どもと近距離でやりあうのはまっぴらごめんだし、 俺をぶっ殺すための策やアイデアを持った連中となんて顔を合わせたくもなかった。 「ノートン卿」 『くだらん意見は却下する』 「その素晴らしいお力で奴らを皆殺しにする、って作戦はどうでしょう?」 『くだらん意見なので却下する。いいか、愚かな編集者、ユキオよ』 ノートン卿はむしろ俺を諭すような口調で語る。腹が立つ。 『常に読者を意識せよ。 彼らが望んでいるのは、私の華麗なる活躍であって、やつらの殲滅ではない。 結果としてむろん私は必ず勝利するのだが、その過程が問題なのだ』 「はあ」 『ユキオ、きみは私の戦いを如何に演出するか、そのことだけ考えるがいい。編集者ならば』 「そうっすか」 つまり、ノートン卿は例によってまったく役に立たないということだ。 「なんとかあいつら、相互攻撃で自滅してくれねえかなあ。 ……もうしばらく引きこもって様子を見ますか」 『何を言っている、馬鹿め』 ノートン卿は俺を叱責した。 『連中がここまで派手にやっているのだ! 主人公である私が遅れをとってどうする!』 「やめましょうよ」 まず俺の口から出たのは否定的な言葉だった。 思うに、俺はそろそろ反省から学ぶべきなのだ。 このノートン卿は、否定されるほどに己の意志を強固にする。 「ぜったい隠れてた方が有利ですって」 『私は私より目立っている登場人物が存在することに、我慢がならんのだ!』 案の定、ノートン卿は激昂した。 『きみも私の編集者なら、それなりの仕事をしろ! 私を目立たせろ!』 「目立たせろって」 そして俺は迂闊な言葉を口にする。 「スポットライトでも浴びせろって?」 『応、それだ! ――ユキオのくせに有益なインスピレーションではないか』 ひとの脳内に向かって、大声でわめきやがる。 ノートン卿は、すっかりその考えにとりつかれてしまったようだった。 『この屋敷を燃やせ! 焼き尽くすのだ! そして炎の照明で私の戦いを彩れ!』 「え?」 『なにをぐずぐずしている、ユキオ! 燃やせ!』 「え?」 『焼き払え!』 結局のところ、俺はノートン卿の要請を無視できない。 こんなところで協力を断られたり、機嫌を損ねてはたまらないからだ。 俺の「え?なんだって?」戦術はすぐに瓦解した。 数十秒の問答の末、俺は影の中からおもむろに松明と、油壺を編集することになった。 ―――――――――――――――――――――――――――― ある建物が火に包まれる場合、自ずと退避する場所は決まってくる。 無差別的な破壊現象と、異世界・異形の解体業者による活動が行われていればなおさらだ。 上へ逃げるにしても、下へ逃げるにしても、このとき、収束する地点はひとつだ。 開けた場所、すなわち階段のあるエントランスである。 このとき俺が彼と遭遇したのは、完全な必然性の中にあった。 「なに考えてんの、あんた?」 弓島由一という少年は、生意気を立体化して、火薬を装填したようなやつだった。 片手には拳銃。ガスガンだったか? だが、それが射出する弾丸は、リアルな拳銃以上に危険であることなら知っている。 翻って、こちら。俺の武装は右手に抱えた一冊の本。 左手には、頼りなさげな影の松明。煌々と青白い炎がその先端で燃えている。 ノートン卿の《影の城塞》が保持する、備品のひとつだ。 ロケーションは一階へと続く階段を備えた、吹き抜け式の大ホール。 あたりは炎に包まれ、煙が立ち込め、ついでに大規模な自壊式解体工事が始まっている。 「自分自身をバーベキューするつもり? 頭だいじょうぶ? これ、自分も不利になるよね、明らかに」 人を小馬鹿にしたような態度。 俺はこういう生意気な餓鬼が、言うまでもなく大嫌いであった。 「俺だってこんなことしたくねーよ、クソガキ!」 俺は軽く咳き込んで、悪態を返した。 煙が辛いし、熱気も我慢しがたい。それは相手も同じだろう。 「それにこの惨状の責任は、三分の一くらいお前にもあるんだからな」 「オレはちゃんと自分が安全な状態から惨状つくるつもりだったよ。 あんたのは思い切り自分巻き込んでるし」 弓島少年は自分のこめかみのあたりを指先でつついた。 「ここ、足りてないんじゃないか? 低学歴だろおっさん?」 それは俺の怒りの琴線に触れ、思い切り引きちぎった。 このガキは年上への敬意が足りない。 『的確な指摘だ』 ノートン卿は俺への思いやりが足りない。 「大人にはいろいろあるんだよ。 派手にやれって言われたから仕方ねえだろ、ぶっ殺すぞ!」 「出た。精神年齢低そうな喋り方」 弓島少年は、むしろ呆れたように首を振った。 「話は聞いてる。その本だろ? さっさと売り飛ばした方がいいとおもうけどなァ、オレは」 弓島少年は喋りながら、仕掛けるタイミングを見計らっているようだった。 密林の猟犬のように、ゆっくりと歩きながら、一階へと続く階段へ向かう。 俺はそこに回り込むように、足を進める――弓島少年と近づくように。 「そんな狂った本持ってても、不幸になるだけだよ。 それともあんた自身もイっちゃってる系?」 ひどい言い草だ、俺とノートン卿を一緒にしてもらっては困る。 だが、俺の反論はノートン卿に封殺された。 『無礼な小僧だ』 ノートン卿の馬鹿げた怒りに満ちた声が響いた。 『八つ裂きにせよ! 断固粉砕あるのみだ、許す、殺れ!』 「ノートン卿に許されてもな……」 俺は愛想笑いするしかない。 仕掛けるタイミング。それが最高に重要な要素だ。 特に、このガキと、俺との戦いにおいては。 「ノートン卿。影の城塞。最古の殺戮文書」 弓島少年は歩き、呟きながら、俺の手の中のノートン卿を見る。 お互い、徐々に近づく移動経路。 「あんたに勝ったら、それ、もらっていい?」 なんてこった。俺は頭を抱えたくなった。 『ほほう。面白い。 この小僧の思い上がり、苦痛と恐怖をもって報いよ!』 ノートン卿の一方的な言い分は、いつも冷酷だ。 「――古本屋かよ、お前? それとも主人公?」 俺は訊ねる。弓島は生意気に笑う。 「だったら、どうかな」 「決まってる。お前なんて、」 俺が言いかけたところで、決定的なタイミングが訪れた。 半ば予想していたことではあったが、それは、 俺がもたらしたものでも、弓島がもたらしたものでもなかった。 「――行け」 低く、どこか虚ろな声だった。 「仕留めろ」 端的な命令であった。 倉敷椋鳥は、このホールに繋がる回廊の奥に、既にいた。 人形というよりは、石膏像のように硬質、かつ虚無的な表情であった。 足元にはいくらかの、小型の狼のような黒い異形。 来る、と思う前に、煙と熱の陽炎の奥から異形どもが飛び出してくる。 事前情報は半分あたりだが、半分はずれだ。 単純なGO・STOP程度の命令は問題なく通せるらしい。 だが、この俊敏さはどうかしている。ひどい凶器じゃないか。 それでも俺は考えるべきだったのだ。 魔人が、自らより遅かったり、ひ弱だったりする手駒を使うものか? 異形の狼が駆け込んでくる。 弓島少年は、何か――細かいゴミのようなもの、恐らくコインかネジか釘か? とにかくそいつらをポケットから空中に投げ上げ、スタームルガーで狙いをつけた。 ガキのくせになんて正確さ。 弓島少年の銃弾が、わけのわからん空中のゴミを連続して撃ち抜く。 俺としては、ノートン先生の力を借りるしかない。 松明を投げ捨て防御、防御防御防御! クールな俺としたことが、それしか考えつかなかった。 『よい。やれ!』 ノートン先生の命令とともに、本がひとりでにめくられた。 俺はいくつかの単純なスペルを編集し、己の影から《壁》を形成する。 これで耐えられるか? 壁が俺の視界を遮る直前、弓島少年の魔弾で撃ち抜かれたゴミが加速した。 まるで弾速。 くそっ。弓島由一。 弾丸自体は殺傷力に欠ける能力だと思っていたが、認識を改める必要がある。 それらの散弾は、俺と、倉敷椋鳥の放った狼に対する正確な迎撃となる。 コインやら金属片やらの弾丸は、俺の壁に当たって苛烈な音を響かせた。 あれが人体に当たったらと思うと恐ろしい。 そしてそれだけではなく、一拍遅れた衝撃のあと、壁自体がきしみ始めた。 「あーあ。畜生。やっぱりな!」 俺は思わず怒鳴った。 あいつ、この《壁》自体も撃ちやがった。これはヤバイ。 弓島由一の魔弾――《ガンフォールガン》は、ノートン卿の《壁》にも通用する。 俺の影が生み出した《壁》は、ゆっくりと、だが歩くような速度でこちらに迫ってきていた。 すぐに《壁》を解除するか? そのとき、俺は蜂の巣だろう。 そして魔弾の方に当たりでもすれば、それはすなわち脱落を意味する。 背後は壁。横は手すり。 一階へと続く吹き抜け状のホールだ。 『落ち着け、愚か者め』 ノートン卿の声。個人的には、役たたずは黙っていた方がいいと思う。 このチンケな《壁》がやっぱり通じなかった以上、逃げるしかない。 さらには当然のように、軋みながら動く壁のてっぺんから、異形の狼が頭をのぞかせた。 こっちは倉敷椋鳥の愉快なペットだ。 壁をよじ登ることができるらしい。そりゃ予想ぐらいしてたさ。本当だ。 ただ信じたくなかっただけだ。 圧倒的な防御力を誇るノートン卿の城塞だが、弱点はいくつかある。 そのひとつが、《人海戦術》。 寄ってたかって城壁をよじ登り、穴を掘り、乗り越える。これには対抗する術がない。 ノートン卿はあくまでも受動的なシステムなのだ。 『何を突っ立っている、ユキオ!』 ノートン卿は口だけは達者に命令してきやがる。 『さっさと退避せよ! 八つ裂きにされたいか、それとも押し潰されたいか!』 「そんなの」 俺は傍らの手すりに足をかけた。見下ろすのは、一階へと続く吹き抜け状のホール。 すでに炎が一階にも回っており、陽炎と煙を俺の顔を無遠慮に吐きかけてくる。 「わかってますって」 俺はほとんど躊躇なく空中に身を躍らせる。 とはいえ、怪我をすることが前提の無思慮な跳躍ではない。 俺の影が一階の床に染みを作った瞬間、すでにそれは階段状に立体化を始めていた。 俺はそれを使って一階へと逃れるつもりであった。 高低差があれば、弓島由一の魔弾にもいくつかの制限がつく。 《壁》や《盾》での防御ができる。 飛び降りる一瞬、弓島由一の迷惑そうな顔はちょっとした見ものだった。 ――が。 「お前たち程度に」 と、俺と同様、反対側の手すりに足をかけた男の声が聞こえた。 倉敷椋鳥の空虚な目を、俺は見上げることになった。 「あまり時間をかけてはいられん。手の内も、そうそう明かすわけにもいかない。 つまり」 倉敷は背中側から不吉に光るナイフを引き抜く。 「ここで脱落してもらうか、相川ユキオ」 そうして、倉敷はジャケットを翻して跳んだ。 さすが魔人の脚力。俺よりずっと強い。 一階に着地しても無傷で済む自信もあるのだろう。 『甘く見られたものだ。なるほど。 やつが手強い主人公であることは認めよう。しかし!』 ノートン卿が勝手に喚いていた。 『この物語の真の主人公は、この私! サー・ノートン・バレイハートただ一人よ! ユキオ、やつに一騎打ちを挑め。我が名誉の城塞で粉砕してくれよう!』 「やです」 俺は自分の影でつくった《階段》を転がり落ちるように降りながら、どうにか本をかかげた。 「ここは、仕切り直しですよ」 飛び込んでくる倉敷の方へ、全力でスペルをかき集め、編集する。 『なんということを!』 ノートン卿の怒りの声は遅く、影の《鉄格子》が一階の床から伸び上がった。 不幸中の幸い、火をつけて回ったおかげで影は無数にできている。 倉敷の跳躍を叩き落とすか、あわよくば串刺しにできるか? だが、そんな期待はするだけ無駄だった。 この期に及んで、ようやく俺は相手にしているのが魔人だということを知った。 倉敷は空中で身をひねり、姿勢を制御する。 眼前を閉ざしかけた、伸びかけの《鉄格子》の先端にナイフの切っ先を引っ掛けた。 これを支点として再度跳躍。 いとも簡単に影の《鉄格子》は飛び越えられ、俺はやつの一撃の前に無防備にさらされる。 どういう運動神経と腕力してやがる、魔人め。 『だから言ったはずだ、無能の編集者め!』 このやくたたずの本が、ここまでに一体なにを言ったというのだ。 俺は抗議したかったが、それどころではなかった。 『そんなつまらんトリックは読者が望んでおらぬゆえ、上手くいかぬのだ。 仕切り直す? そのような愚鈍で冗長な展開は、犬にでも食わせよ!』 ノートン卿のひどい言い草が響き、倉敷の冷酷な――というより無感情な目が迫る。 『正面から戦う、雄々しき戦士の武勲! それこそ太古の昔から連綿と続く、真の英雄の物語。 つまり真の読者が望むものだ! 己を恥じよ!』 うるさい。 俺はノートン卿を持つ左腕を掲げた。 別に耳を塞ごうと思ったわけではない、耳を塞いだところでこのクソッタレの声は聞こえる。 そういうわけではなく、ただ―― 倉敷椋鳥のナイフを俺の左腕が受け止める、ごきっ、という乾いた音が響いた。 「――ふん?」 倉敷は怪訝そうに片目を細めた。 それはこいつが初めて浮かべた、表情らしき表情だった。 俺の左腕は、倉敷のナイフを完全に受け止めていた。 外套の下の皮膚一枚、うっすらと血の滲むところで、冷たいチタンの痛みを感じる。 「お前」 倉敷は何か呟こうとした。 「魔人――なのか? しかし」 「うるせえっ!」 怒鳴って、俺は倉敷を思い切り蹴飛ばした。自然、その反動で俺も階段から転げ落ちる。 魔人でない俺にとって、これはとても堪えた。 ―――――――――――――――――――――――――――― 転げ落ちた瞬間、肺から空気がぜんぶ抜けてしまいそうな衝撃があった。 痺れる。 かろうじてノートン卿を取り落とさずに済んだことは褒められてもいいのでは? 『気を抜くな。寝ている暇はないぞ』 こうしたとき、ノートン卿の言葉は辛辣である。 しかし、彼の言い分もわかる。 一階にも既に炎は蔓延しており、俺は立ち込める煙の向こうから近づいてくる人影を見た。 強い煙に目が霞む。誰だ、手当たり次第に炎を付けやがった奴は? 「相川ユキオ。元・古本屋。殺戮文書の編集者」 倉敷椋鳥の細長いシルエットが煙をかき分けた。 その右手には拳銃。 種類なんて俺はわからないが、誰かをぶっ殺そうとするための武器であることはわかる。 倉敷は虚無的にすぎる表情で、俺とノートン卿を交互に見た。 「お前たちには賞金がかかっていたな。 谷根千の古本協会に恩を売る趣味はなし――関わるまいと思っていたが」 倉敷の顔に感情はない。 あるのはただ、何かを測定しているような実験者の表情だ。 「なぜ戻ってきた? わざわざ、こんな目立つところに」 「ケッ! 俺は戻ってきたくなかったぜ」 中指を立ててやる。 「ただ、うちの主人公がな。逃げ回るのは趣味じゃねえんだとさ! クソ野郎、その顔グシャグシャにぶっ潰してやるからな」 『よい回答だ』 ノートン卿は満足げに肯定した。俺にしか聞こえないが。 『満点をやろう。よって、いまから私がきみの戦いを指導してやる』 そいつは嬉しい。涙が出そうだ。 「……よくわからないな、お前の言い分は。 なぜあえて不利な選択肢を選ぶのか?」 倉敷は測定しかけていた何かを、簡単に投げ出した。 「結局のところ俺には欠けているんだろう、そういう何かが」 彼の足元に、無数の黒い影が集まりつつある。 異形の獣ども、やつらには煙も熱気もたいした脅威ではないらしい。 「だが、ただひとつ、望みがあるとすれば――俺には――」 『ふん。オレイン卿が付け込みやすそうな手合いだ。 あの精神状態は興味深い。絶望した者の顔だ、主人公として手ごわいぞ』 ノートン卿は忌々しげに吐き捨てた。 『それともオレイン卿めとは無関係か? 打ち負かしてから訊ねるとしよう』 「はあ。そうですね」 俺もようやく全身の痺れがとれ、戦闘準備が整いつつある。 蔓延する煙を避けるように、体を低くする。 「――ああ、残念」 このとき、ひどく楽天的な、少年の声が聞こえた。 ひとり悠々と階段を降りてきた弓島由一は、一段高いところから、 不遜な目で俺と倉敷を眺めていた。 「どっちにもそれほどダメージはないみたいだね。 まあ、いいけど。ここで終わりにしようか?」 弓島由一は、例の物騒なエアガンを掲げてみせた。 「どっちも二人揃ってる。この状況からなら、オレが勝つし。 いまなら降参してもいいよ」 「……」 倉敷はそちらを一瞥しただけで、また俺に向き直った。 「……あれは、ほんの子供だ。やはり問題はお前だな」 そんなこと言われても、困るぜ。 俺はアメリカの俳優のように肩をすくめた。 そして、いくつかのことが瞬時に起こった。 「無視」 弓島由一はエアガンの銃口を、すこし下に向けた。 「するなよな、おっさん!」 床を撃つ。マジかよ。 ばきばきと唸りをあげるような音が響き、打たれた部分の床が割れ始める。 俺と倉敷は態勢を崩さざるを得ない。 だが、倉敷はよろめきながらも平然と左手をあげ、掌をこちらへ向けた。 なにかの紋章のような刺青。そして手の甲に拳銃の銃口を突きつけ―― 「いけ!」 銃声が連続して数度、その掌から血の迸りとともに何かが飛び出してくる。 異形の、蜂に似た影であったと、後にノートン卿は教えてくれた。 実際には影など視認する暇もない。 それは弾速で飛ぶ、異世界からの存在であった。 自分の手をゲートに、銃弾を媒介に、こいつらを呼びやがった。 イカれてるな、この男は。 最後に俺は、といえば。 『では、英雄の戦い方を教えよう』 こともあろうに、ノートン卿のアドバイスに従って動いていた。 『まずは、颯爽と馬に乗り――』 ノートン卿のページを翻し、俺は影から《軍馬》を編集した。 陽炎のような影のタテガミをもつ、命なき馬。 だが、城塞の魔導書であるノートン卿によって編集されたそいつは、 完全な状態で手入れされ、出撃命令をいままさに待機していた駿馬に他ならない。 俺は乗馬なんてろくにできないが、しがみつくくらいのことはできる。 影から飛び出した《軍馬》の手綱をかろうじて掴む。 向かう先は倉敷椋鳥。 やつは怪訝そうに眉をひそめていた。無謀な突撃に見えるだろう。俺もそう思う。 というか、まさにその通りだ。 『次に、雄々しく槍を掲げ――』 俺は何ももたない右手を掲げた。 その瞬間、倉敷椋鳥の放った異形の蜂の何匹かは、疾走する《軍馬》の首を正確に貫いた。 他の何発かは弓島少年に向かったのではないだろうか。 もとより、この弾丸をかわせるとは思っていなかった。 《軍馬》は悲鳴もなく力を失い、黒い影のゆらめきに戻る―― 誕生から消滅まで、わずか数歩の運命であった。 ただし慣性の法則が消えるわけではなく、俺の体はそのまま前のめりに跳ぶことになる。 『そして、鬨の声をあげながら、正面から突撃するのだ! かかれ!』 ひでえアドバイスがあったもんだ。 だが、それで充分だった。 宙を跳んだ俺は、倉敷に飛びかかっていく姿勢になった。 むろん、倉敷も黙っていたわけではない。 やつは拳銃の狙いを即座につけ、俺めがけて発砲した。 狙いも正確、頭部。眉間の中心。 しかし俺は左腕ですでにそこを庇っている。 銃弾が左腕に当たる衝撃。 乾いた音が響き、左腕の皮膚一枚のところで俺の血が弾けた。 「やはり、そうか」 倉敷が呻いた。 「その腕はなんだ? 魔人か? いや――お前はただの――」 「そうそう、編集者なんだよな」 結果として、俺は倉敷に飛びつくことに成功した。 ついでに、その頭部を右手で掴むことも。 互いに倒れこむ一瞬、倉敷は俺の右手の平にあるものを見ただろう。 そこにある刺青のことだ。 ノートン卿のおよそ1ページ分に相当する、複雑なスペルがびっしりと腕を覆っている。 おかげで俺は偉大なノートン卿の機能をほんの少しだけ、 限定的ではあるが自分の肉体で行使できるということだ。 ノートン卿を持つ左手には《城壁》のスペルを。 そうでなければ魔人の一撃を防いだり、銃弾を弾いたりできるものか。 倉敷椋鳥が己の体にゲートを刺青として刻んでいたように、俺は俺で必死に色々やっているのだ。 特に俺は、魔人でもない普通の人間なのだから、なおさらだ。 「――編集者、」 倉敷は何か言おうとしただろうか。 だが、俺の右手の刺青に仕込んだ《槍》のスペルが編集される方が速い。 攻撃の完成には音もなく、倉敷の頭部は血飛沫とともに爆ぜる。 俺の手の平から編集され、飛び出した槍は、この魔人の頭蓋骨を完全に貫通・破砕していた。 それとほとんど同時、右の腿にかすかな衝撃を感じた。 残るは、弓島由一しかいない。 振り返るとこちらに銃口が向いていた。 「オレの勝ち」 弓島由一は、その《魔弾》を完全に俺に着弾させていた。 俺の体に止めようのない何かの力が働くのがわかった。 「武器の性能が違ったね、おっさん。ま、そういうことで」 「うるせえぞ、クソガキ! 爆散して死ね!」 俺は右手に編集された、影の《槍》を思い切り投げつけた。 弓島由一はむろんそれに取り合わす、軽く身を捻ってかわした。さすが魔人の動体視力。 「無駄だって。もうここからじゃ」 弓島少年は階段に腰掛け、嘲笑うでも、勝ち誇るでもなく、ただ片眉を持ち上げた。 床には地割れができて、ただでさえ距離が離れている。 俺はこのまま吹っ飛ばされて、場外負けになるのか? やれやれ。 「そうかよ。お前のことは――」 ここから逆転できる可能性は、万に一つもない。 俺はノートン卿をそっと閉じた。 「最初から脅威じゃなかった。なぜかといえば」 『然り。主人公として、この小僧は薄い』 ノートン卿は厳かに断じる。 『肝に銘じておけ、ユキオ。きみも同じくらい薄いからな。 バックボーン、戦う理由、過去にまつわるすべて。これをプロローグという。 その質量が主人公を強くするのだ。この私のように!』 「そうですね」 『プロローグ無きものに敗北するノートン卿ではないわ、馬鹿め!』 「そうですね」 反論する意味はなさそうで、やはり俺は相槌を打つだけの機械になろうと思った。 この状況、編集者の発言にどれだけの価値があるだろう。 ――ノートン卿を閉じたことにより、俺が編集した影の《階段》はその構造を失った。 雪崩のように倒壊し、それは、弓島由一を巻き込んで恐るべき轟音をたてた。 最後に弓島は逃げようとしたが、逃げても無駄であっただろう。 なぜなら、この戦いが終了した後。 最終的に俺が一息ついたとき、洋館のすべてが崩れ落ちたからだ。 弓島の《魔弾》の効果により、壁をすり抜け、館の外に飛ばされた俺はその崩落から免れた。 洋館の基礎構造部分をまるごと、ノートン卿の影の城塞による安全設計素材でこっそりと入れ替える。 言っておくが、これは俺のプランだ。 ――いや、本当に。 ノートン卿が「とにかく派手にやりたい」と主張したのは事実だが。 ―――――――――――――――――――――――――――― 『ところで見たな、ユキオ。倉敷椋鳥のあの紋章を』 「魔導書のスペルに似てますね」 『いや、紛れもなくそのものだ。 オレイン卿が手勢を潜ませているのは間違いない!』 「そうですかね」 『そうだ』 「そうですか」 『そうだ』 「……割りに合わないっすね。俺、いいこと考えましたよ」 『言ってみろ』 「大会運営本部に忍び込んで、賞金だけ奪って帰る。邪魔をするやつは殺す!」 『恐ろしく下劣な発想。だが』 「だが?」 『大会運営本部に奇襲をかけるというのは、一理あるな。 ふむ。やつらがオレイン卿と繋がりがあるかどうか、調べることができる。 検討の余地はある。つまり、次の計画はこうだ――』 このページのトップに戻る|トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/dante/pages/34.html
序章 3年前俺の家族が死んだ。 親父は、ドラッグに手を染め、警察に逮捕された。 そのせいで、俺は母さんに虐待された。 小学6年の頃の俺の頭では理解できづにただ殴られた。 そして、母さんは精神異常と虐待で警察にいった。 それからの俺は、荒んでいた。 犯罪やタバコ、酒に手を染めていた。 俺は・・・その年の冬のクリスマスに俺は出会った。
https://w.atwiki.jp/rasenn/pages/33.html
あの! 国語70点台常連の螺旋が!!! SS書きまーす 見てね ゲー部屋の長い夏休み「火炎編」 ゲー部屋の長い夏休み「三浦編」 SSの登場人物共
https://w.atwiki.jp/dangerousss3/pages/191.html
第二回戦【活火山】SSその1 『甚だしい不条理である。私は勝利を収めたのだぞ』 古本屋による暗殺の心配がない、という点では、選手控室は完璧な拠点ではあった。 10時間単位で続く愚痴と不満の声を遮断する手立てがあれば、理想的だ。 『この私の下に、義勇兵の一人も参画せぬのか? ユキオ、貴様の腑抜けた戦いぶりのためではあるまいな』 「それよりも、金ですよ。話聞いてましたか?」 従者よりも、目下の問題はそれだった。 第一回戦の内容は、ただでさえ儚い俺の勝算を、完膚なきまでに打ち砕いたといっていい。 「従者だって、俺みたいに心の広い聖人ばかりじゃないでしょう。 そもそも給料はどうするんです? 戦闘の準備には、それなりの対価が必要なんですよ」 『英雄の物語に従軍する名誉に、対価だと? 久々に面白い冗談を聞いたものだ、ユキオ』 金を貰っても御免だ。 ――結局のところ、トーナメントの構図は非常にシンプルだった。 外の世界で有効な力は、試合場の内でも、変わらず有効に働くのだ。つまり、金だ。 隠し銃。ショットガン。軍用アサルトライフル。仕込み傘。 挙げ句の果てには対魔人兵器だ――冗談じゃない。 倉敷椋鳥は拳銃を持ち込んでいた。それは奴の調達技術と社会能力の証明でもある。 俺はといえば、そのどちらも持ち合わせていない。 あいにく全財産は両腕の刺青に変わってしまったし、古本一冊を買うのがやっとの有様だ。 「……で、こいつはどうですか。赤羽ハル」 『きみと同じ逃亡者だな。いくら金を生もうと、所詮兵具を整えうる立場ではあるまい。 とはいえ』 「俺が編集者じゃあ勝てないって言うんでしょう。……最悪だ」 低学歴の俺にだって、さすがにそれくらいは分かる。 魔人暗殺者。この世で古本屋の次にお近づきになりたくない人種だ。 魔人の身体能力に暗殺技術が備わっている状態を、俺は想像したくもなかった。 「……まあ、わかってます。だからって逃げている場合じゃないって事も」 『然り。退路は存在しない。私が勝利するたび、大会運営本部を探る機会も増えよう。 読者は我々の華々しい勝利をこそ望んでいる。認識せよ!』 「そうですね」 俺はろくに準備もできないまま、戦場に放り出される事になる。 結局、編集者の俺が多少なりとも使いこなせそうな兵器はこの殺戮文書くらいしかなく、 それに何よりの問題として……俺には金がないのだ。 ―――――――――――――――――――――――――――― 吾妻連峰・一切経山。遥か古代、福島県庁が総兵力20万もの運輸業者を押し留めた天然の要害。 その際に流された運輸デュラハンの夥しい流血は大地に呪いとなって染みこみ、 300年が経過した現代に至っても、この地には草木の一本すら生えることはないとされる。 俺とノートン卿が放り込まれたのは、そういう死の世界だ。 「会えて光栄だなあ、有名人!」 ヘラヘラと軽薄な表情を浮かべた赤羽ハルは、想像通りの殺戮機械だった。 やつの声は20m離れたこの距離からもよく聞こえるし、武器の射程はそれ以上だ。 俺の隠れる大岩の先端が、飛来したコインに鋭く抉られる。 「都内はあんたの写真ばっかりだよ。そのうち価値が出るんじゃないか? あんたのサイン」 「黙ってろよ。気が散るんだ!」 俺は喚いた。低く鳴り続ける地響きがうるさい。 汗すら蒸発しそうな熱気は、俺の思考能力を確実に奪ってくる。 どうして俺の相手は、こうもろくでもない連中ばかりなんだ。 『ユキオ』 ノートン卿の声と同時に、さらに二発のコインが岩を揺らす。 無駄弾か? 威嚇のつもりなのか。 『威力を測っているな。岩を貫通し得る距離まで近づくつもりであろう』 「まずいじゃないですか」 『そもそも、こうしてコソコソと隠れるきみの怯懦が愚策なのだ! 何度も言わせるな! 英雄たる私に相応しい戦闘を見せよ! 突破するのだ!』 「……って、言われても」 ゴリ、という振動が、背にしている岩から伝わった。 赤羽の弾いたコインが、ついに岩を抉るのではなく、めり込みつつある。 やつは白兵の距離にまで接近している……俺はすぐに行動を起こす必要があった。 俺を隠す大岩から長く伸びる影が、そのまま《壁》として立ち上がった。 幸い、影を作り出す光源ならそこら中にある。時折岩壁を流れるマグマがそれだ。 「おっと」 《壁》の向こうで聞こえる赤羽の半笑いが、苛ついて仕方がない。 赤羽と俺を分断する《壁》に沿って、俺は別の岩陰へと走った。 右手は断崖だ。距離を取る必要がある。 走る俺の頭上にふと、宙を舞いながら降り注ぐ何枚かの紙切れが見えた。 それが壁越しにばら撒かれた一万円紙幣――日本銀行券だと知ったその時には、もう遅かった。 「なんだ、くそッ――」 俺は咄嗟に顔をかばった。 同時にすべての紙幣が爆発して、俺は撒き散らされた10円玉を大量に食うことになった。 「『ミダス最後配当』」 一万円札のすべてが、同時に1000枚の10円玉へ。金から金への換金も思うがままというわけだ。 痛みは一瞬だが、逃げる足を止められたのは絶対にまずい。 「時間差換金……で、」 既に《壁》を乗り越えて、赤羽が狙撃体勢に入っている。 反撃と視界を封じたあの一瞬で跳躍して《壁》の上に手をかける、馬鹿げた身体能力。 「こいつで終わりか? 相川ユキオ」 『まずいな。飛べ。ユキオ』 「言われなくても」 即座に俺は、断崖へと飛んだ。 「わかってましたよ!」 落ちながら答えた。これは純粋に俺のアイデアだと主張しておきたかったのだ。 ―――――――――――――――――――――――――――― 悲鳴を上げる全身の苦痛をこらえながら、俺は状況を確認した。 眼前には7m程の断崖。あの赤羽でも、直接飛び降りれば負傷は免れない高さだろうか? だが少なくとも、やつに《土嚢》のような衝撃吸収の手立てはないはずだ。 「で、どうします? 正直、めちゃくちゃですよあいつ」 影の《土嚢》を沈めながら、俺は咳き込んだ。 そこらに溜まった温泉らしき白く濁った水溜りが、不吉に沸騰している。 こういう低い地形には、有害なガスやらなにやらが溜まっているに違いない。 『換金の呪い。魔術としてはチープだが、奴自身の能力がそれを補っている。 相応に危険な主人公ではある。ユキオ! ならば当初の予定通りに正面から――』 「いや、無理ですって。どうするつもりなんですか、これで」 俺は、右手に下げた紐付きの頼りない道具を見た。《投石具》。 確かに、殴るよりもずっと効率的な手段ではある。弾ならばこの岩山にいくらでも見つかる。 《弓》や何かに比べれば、格段に扱いやすい武器…… だが、こいつであの赤羽ハルと撃ち合おうと思考できるような人間は、 基本的には狂人か自殺志願者、あるいは古本屋のどれかに分類されるのでは? 「随分無茶したなぁー! なぁ、っていうか元気だな!?」 遠く、崖の上から赤羽が見下ろしていた。 「知ってるか? そこに湧き出てる水溜り、たぶん有害だぜ。 高濃度の硫化水素泉だ……目は大丈夫か?」 いくら試合形式とはいえ、この距離でも殺害対象との会話を続けようとする努力は、 サービス精神を通り越して偏執的ですらある。 編集者は会話が苦手な業種なんだ。放っておいてくれ。 「ちょっと肝が冷えたよ! 俺が殺す前に事故で死なれると思っちまってさぁー! 交通事故で死んだターゲットの話とか、聞きたい? ……とりあえず、そこ。早いとこ離れたほうがいいぜ」 「知るか! お前は、ちょっと黙ってろ!」 『前々から思っていたが、ユキオ。きみの挑発への耐性は呆れるばかりだな。幼児か? なぜ私という主人公の傍にあって、英雄の泰然たる心構えを学べぬのだ?』 「……なあ。魔導書に影響されて、判断力もおかしくなったか? 俺が言ってるのは」 『ユキオ! この無礼者を即刻処刑しろ!』 ありとあらゆる意味で状況は最悪だったが、それでも俺は動くわけにはいかなかった。 確かに、有毒な蒸気……やら何やらが、溜まる地形なんだろう。 けれどそれだけで、俺を殺せると確信もできないはずだ。プロの暗殺者ならば。 現に赤羽ハルは、突き出した岩を少しずつ跳び移って、窪地に降りつつあった。 「俺の言ってるのは、さ――」 そして再び100円硬貨を目の高さに構えた。遮蔽物のない地形。距離30m。 「逃げられないだろ、って事だよ。そこじゃあ」 足音が近づく。おそらくコインの射程は拳銃弾と同程度。約20m。 距離20m。10m。赤羽から視線を外さないまま、俺は脳内でカウントを進めている。 「……そうだな」 その点については、同意だった。 「逃げられない」 ……5m。赤羽ハルまで5mだ。やつの背後から迫る、落石が――だ。 うるさく地響きの続く活火山では、落石の音も紛れて聞こえないだろう。 俺だって、何の考えもなしにあの時《壁》で視界を遮ったわけじゃない。 大岩に紐で《軍馬》をくくりつけた――それをこいつに見せないための《壁》だ。 転落した俺に注意を向けたまま、この窪地にまで降りてもらうための。 《軍馬》が岩を引く弾道は、俺とクソッタレを結ぶ、この直線上……だ! しかしそれでも、俺は理解しているべきだったのだ。 俺が相手にしているのは、マッハ3のミサイルすらも凌ぎ切った、あの赤羽ハルなのだと。 赤羽ハルは、命中ギリギリで―― 俺から視線を離すこともなく、ふらりと横に逸れて、岩の軌道から逃れた。 自身の脇腹をかすめて裂いた大岩を見送ると、一気に走り出した。 「悪いな、相川」 どうかしている。赤羽の口元が見えた。殺人者の笑みだった。 「予兆がわかったもんだからな、かわしちまったよ」 『硬貨だ』 声が淡々と分析を続けていた。 『先程の爆撃でまき散らした硬貨が……落石に巻き込まれた。 弾かれて落ちる硬貨を見て、やつは予兆を把握した』 足元を見た。崖上から飛び散った一枚の10円玉が、まさに倒れるところだった。 『最初から、背後からの攻撃を探知するためにまき散らしていたのだ』 ―――――――――――――――――――――――――――― 指弾の最初の二発は、幸運にも狙いを逸れて地面に着弾した。……幸運か? けれど作戦が瓦解した今、俺のやるべきことはあまりにもシンプルだ。防御だ! 「さすがは、暗殺者だよ……行くぞ!」 俺は足元の影から、《城壁》を、 『ユキオ何をしている! 無能の編集者め!』 ノートン卿が本気で焦った声を聞いたのは久しぶりだ。 ……腹が立つが、できないものはできないのだ。 一瞬前まであった光源が、ない。 「無理だな。最初の指弾は硬貨じゃない」 ノートン卿の声が重なる。 『丸めた紙幣だ! 一円玉に換金した、大量の硬貨で――』 光源のマグマを、溶けたアルミで塞いだ。……くそっ! やつの手に硬貨はない。せめて次の指弾を装填する一瞬、と考えた俺も甘かった。 既に赤羽ハルは――片方の靴を脱いでいる。 切断を伴う絶速の蹴りを、俺は認識することすらできなかった。 冷たい切断の感触が、左腕の皮膚一枚でごきりと反響した。 割れる音。肩か? 今の衝撃で骨が、関節が砕けたに違いない。最悪だ。 ゴミのように一発で蹴り散らかされた俺は、窪地のさらに下へと転がり落ちる。 「……仕込んでやがるな。防刃プレートか」 赤羽ハルは、片足を高く上げたままの、蹴りの体勢で…… 足指に挟みこんでいた、血塗れの千円札を捨てる。化物め。 「げほっ、ちくしょう……! やって、られるかよ!」 もう左腕が使いものにならない。 切断を防いだところで、赤羽ハルに直接蹴り飛ばされて、命があるだけマシだ。 今の一撃で死ななかったのは……単に運が良かっただけだ。 スパゲッティ・モンスターにでも感謝しなくちゃな。 『おかしい。あの男、ここまでいくらの金を使った?』 「さあ? オレイン卿と取引でもしたんじゃないですか」 『真面目に答えよ愚か者め。この私が質問しているのだ!』 「はあ」 俺はというと、遮蔽物に隠れていられるうちに……赤羽ハルが降りてくる前に、 スクラップと化した左腕に影の《包帯》を巻く事に集中したかった。 その程度の答えは、とっくに分かりきっていたからだ。 「……ミサイルですよ」 『なに?』 「だから、雪山で……換金したじゃないですか、ミサイルを。 ジャケットを脱いで、下に敷く一連の動作で集めていたって事でしょう。何十万円か」 俺は自分で絶望的な気持ちになった。だから言いたくなかったのだ。 つまり実質的に赤羽の弾丸は無限に等しい。この岩山においてさえ。 『すなわち、作戦の方針は決定した』 ノートン卿は厳かに告げた。 『それ程の金額、硬貨の状態で持ち運べるとは思えぬ。 通常は紙幣の形態で隠し持ち、必要に応じて硬貨に換金しているのであろう。 あの男の残弾を速やかに枯渇させ、しかる後に正面から制圧するのだ! でかしたぞユキオ! 即刻出撃し、英雄に歯向かう愚かさを思い知らせよ!』 「ええと、話聞いてましたかノートン卿?」 俺は愕然とした。この最古の殺戮文書とやらは、そのページの7割程がドン・キホーテか何かで構成されているに違いなかった。 「あれは、10円玉を弾いただけで人を殺せるような化物ですよ!? それが何十万と現金を持ってるのに、どう使い切らせろっていうんですか!?」 『なんということを』 『それを理解せぬのが、きみの愚か者たる所以なのだ! 無能な下劣の編集者め! そもそも、ここまでの情けない戦いぶりはなんだ!? 山賊めいた子供騙しは見破られ、 隠れては転がり落ちの繰り返しではないか! よいか! 英雄は断じて見下さねばならぬ! すべての頂点に立つ者、それがこの私、サー・ノートン・バレイハートであるからだ!』 ……めちゃくちゃだ。 俺はというと、痛みと疲労で反論の気力すら失いつつあったのだが―― 最悪なことに、さらに恐るべき事態が発生しつつあった。 『ふむ。そうだ』 つまり、ノートン卿は意志を持ってわめく災いそのものであって、 『櫓だ!』 悲劇的なほどに馬鹿げた思いつきを実行するのは、俺なのだ。 「ああ、意識が遠のいていくなあ。なんだか眠くなって……」 『そんな場合ではない、ユキオ! あの暗殺者を見下ろす櫓を構築せよ! すぐにだ! この山麓の頂点において、偉大なる私の威光を知らしめよ!』 ―――――――――――――――――――――――――――― 「出ーてーこーいーよー」 気の抜けた呼び声が、遠く下から響いてくる。 影の《櫓》。なるほど一時しのぎの岩陰よりは、余程防衛には適していると言えた。 ……この高さから降りる手段が、一つしかないことを除けば。 「さーて、どっちかな……。 中か、上か。入口があるかどうかも、真っ黒でよくわかんねえよなァー?」 《櫓》の頂点は、地上から8m程度か? 《土嚢》で受けたとしても無傷で着地できる自信はまったくないし、そもそも今の状態が無傷とは程遠い。 そして赤羽。やつが下でじゃれる猫みたいに大人しくしてくれる可能性も、絶対にない。 時間が経てば上を攻める手立ての一つや二つ編み出してくるに違いないし、 その気になれば壁を駆け登るくらいの馬鹿はしかねない程度に狂っている。 簡潔に状況をまとめれば、最悪だ。 つまり、今。赤羽が《櫓》の真下で攻めあぐねているこの瞬間に、 俺達はすぐさま決着をつけなければいけない――というわけだ。 「本当にやるんですか? ノートン卿……」 『くどい。今更怖気づいたか? ならばよい。 私としても、名誉も解せぬ臆病者に力を貸す義理など――』 「いや、わかってます、わかってますって、全て閣下の言うとおりにしますし、 華々しい英雄の……えー、決闘? をするって、誓ったじゃないですか。 俺はやる気十分ですし、名誉に思っていますよ! 当然!」 黒革の装丁本は、今は右手に掴んでいる。 本当は嫌で仕方がないと思っているし、失敗すると思っているし、死ぬと思っている。 俺は、人生最大の失敗について思いを馳せた。 つまり、数ある魔導書の中から、ノートン卿を選んでしまったことだ。 「いきますよ」 『征け!』 短い一言と共に、《櫓》が解除された。俺は三度、転落することになった。 まるで俺の人生だ。くそったれ。 その瞬間、赤羽は頭上を見上げた。 ……正確に言えば、見上げた、のだろう。その様子は確認できない。 影の《盾》が、視界を遮っているからだ。 頭上から巨大な《盾》で押し潰す、単純極まる三次元の突撃。 当然、赤羽に対して成功するとは思わない。 真下に構える《盾》の端に、集中して打ち込まれる弾雨を感じた。硬貨の弾丸。 モーメントを逸らされた《盾》は回転し、俺は無防備な姿を晒す事になる。 両手の弾丸を使い切ったその一瞬。――そこで第二の策が発動する。 「教えてくれたっけな」 《盾》がひっくり返ると、その後ろに結わえられていたものもひっくり返る。 ……偉大なる城塞の備品。《桶》だ。 「……へぇ」 「こいつが有害なんだろ? くらえ」 《土嚢》に墜落した時、俺達は同時にその液体をひっかぶる事になる。 高濃度の硫化水素泉。 まるっきり無謀な自爆戦術。馬鹿としか言いようのない思いつき。 ノートン卿がそれを信じる以上、俺は実行するしかないのだ。 ――英雄に、ならなければならないのだった。 肌が焼ける。目がかすむ。足が痺れて、立つ事すら一苦労だ。 ……だが。 「いッ、ッ、だァッ……こ、これで――」 やつは何故、俺の血に塗れた紙幣を捨てた? ――貨幣価値がないからだ! 沸騰した温泉は、全身に仕込んだ紙幣を汚損する。指弾は、狙いを付けなければ撃てない! 「これで、金は、使えないな! クソッタレ!」 俺の目は見えない。だが、それはやつも同じだ。 『征け、ユキオ! 彼奴は前方三歩、右一歩の地点よ! 槍を持ち、雄叫びとともに、今こそ武勲を挙げよ!』 ノートン卿はただの本でしかない。空気を震わせる音は出せないが、それは魔導書なのだ。 それは物理的な領域で物事を見聞きしているわけではないし、 俺の頭に響く煩わしい声を、遮断することだってできない……決して! 『そこだ……ユキオ!』 俺は黒革の本を握る右手を、強く突き出した。 右手の刺青。《槍》のスペルが構築される寸前。 ――すれ違うように、赤羽の右手が俺の手に触れた。 《槍》が敵の腕肉を裂く感触と同時、掌からは4枚の硬貨が滑り落ちていった。 俺はもう、あの書物を握ってはいなかった。換金された。 「ハッ」 笑いが漏れた。妥当な値段だと思ったからだ。 ――ざまあみろ。 ―――――――――――――――――――――――――――― 暗闇。けれど俺だけは手がかりを見つけることができた。 俺が突き刺す赤羽ハルの……肘まで貫通した、まさにその腕だ。 「俺の……勝ちだ! ノートン卿……!」 俺は残る全力を振り絞って、赤羽の胴体へ向けて《槍》を振り回した。 肘を突き抜けた穂先は、そのまま脇腹を引き裂く。俺の勝利―― ――の瞬間、《槍》を握る指が3本同時に切断された。 俺の振り回した《槍》は、何故か赤羽の胴体に当たることなく、地面を撫でた。 勢いで転んだ俺は目を擦った。何が起こったのかを確かめようと思った。 辛うじて、ぼんやりと、周囲の光景が見える。 俺の《槍》は、確かに赤羽の右腕を突き刺したままだった。 しかしその腕は、根本から、新札で切ったかのように、綺麗に切断されていた。 切り離したのだ。トカゲの尻尾のように……どうやって? 「……参ったよ。俺の金を、全部駄目に、しやがって」 嘘だろう、と思った。じゃあ今…… お前の周りに、ばさばさと舞っている金はなんなんだ。 「なんだ……お前」 震える声で俺は呻いた。 いや。なんだこれは、靴が濡れる。明らかに血が多すぎる。 「いやいや。どう、したんだよ、その金は」 「なあ、おし、教えてやるよ……相川。俺はさ」 赤羽が、濁った血を吐いた。 何か恐ろしいことが起きているのだと、俺は直感していた。 「俺は、この試合……ってか、トーナメント、さ。 死ぬんだよな。勝てないと……」 「死ぬんだ」 俺の視界は徐々に戻りつつあった。当然だったが、赤羽は流血していた。 右腕の切断面と…… 岩石が掠った、脇腹の傷。 「ハハハ、実は俺の能力は……魂まで、は、換金……できない。 だから……最終的に取り立てられるのは、俺の魂なんだ。 逆に言えば、さ……俺の『魂』から切り離された部分なら……換金できるって事だろ……」 「お前」 俺は、半分笑っていたかもしれない。 こんなやつに関わりたくない―― この最低の状況で、それ以外の何を考えればいいっていうんだ? ――つまりこいつは、金を手に入れていたのだ。 オレイン卿の取引なんかより、もっと、さらにおぞましい方法で。 「……売ったのかよ……ハ、ハハ……あ、あの一瞬で」 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 そうだ、やつは左手が開いていたじゃないか。 液体を浴びせられた瞬間。一瞬の迷いもなく、浅い傷口を深く抉って。 、 、 、 、 、 、 、 、 、 「内臓を、売ったんだな……」 俺と赤羽の二人共が、今は右腕を失っていた。 俺は左肩が折れて、転がり落ちた傷も疲労もひどい。 そして赤羽は、自分の内臓を引きずり出している。 こんなザマでどうすればいいか、分かるやつは、ノートン卿しかいないんだろう、きっと。 「相川お前、お前本当……す、すげえやつだよ。カハッ、 こんなことまで、するとは、思わなかったからさ……マジで…… 死にそう、だっつーの……」 「……。死ぬってのは、本当なのか……お前」 「……そりゃ、そうだな……だからどんなことをしても勝ちたい」 「俺は、金の亡者だ……」 死人のような顔で、笑った。 ―――――――――――――――――――――――――――― 「よろしいのですか? そちらの腕の治療は」 「ああ、いえ。こっちは大した怪我でもないんで」 銘刈とかいう女の視線は、何もかもを見透かされていそうで気味が悪い。 右手でどうにかサインを済ませ、俺はトーナメントの敗退手続きを終える。 「でも、まあ……これでようやく気が楽か?」 『そんなわけがなかろう』 物理的でない領域で、聞き慣れた声が響いた。 『何しろ、これからが本番なのだからな! 敗退選手として見做された今ならば――』 「大会運営本部のマークも薄くなりますかね」 『然り』 「そう上手いこと行けばいいんですがね」 歩きながら俺は、左腕に撒いたままの影の《包帯》を解く。 黒い包帯はパラパラと解けて、 中からは、開かれたままの、黒革の不吉な装丁の魔導書が―― 最古の殺戮文書にして、『携帯する城塞』が。 、 、 、 、 、 、 、 本物のノートン卿が、姿を現す。 「……とはいえ、それなりに上手く行ったと思いますけれどね。大会中継を見てたやつなら、 『ノートン卿は赤羽ハルに換金された』とか考えるんじゃないですか?」 『古本屋連中の目は欺けまい。そもそも、たかが一般書とこの私をすり替えるなど、 数々の愚劣なるきみのアイデアの中でも、特別に不敬極まる発想だな』 どこにでもありそうな、無個性な装丁で助かりましたよ、とはさすがに口に出さない。 俺はこの試合に、ろくな準備で臨めていなかった。 つまりは古本の一冊を買うだけで、精一杯だったのだ。 何しろ俺には、金がなかったのだ。 『――では、満を持して、攻めこむとしよう。ユキオ。例の、あれは』 「ああ、賄賂ですね。ちゃんとありますよ」 『進貢だ。言葉を選べ、愚か者め』 だが、それは試合前までの話だ。 つまり……俺達は双方にとって、賢い選択をした。 結末はそれだけだ。 『征くぞ。真に主人公として相応しい物語を、きみに見せてやるとしよう。出撃せよ!』 「そうですね」 第二回戦第四ブロック―― 勝者 赤羽ハル 敗北 相川ユキオ(ノートン卿消滅・賄賂獲得) (了) このページのトップに戻る|トップページに戻る